Artifact これから始める人に向けて

 11月29日にValveよりArtifactというデジタルカードゲームが発売されました。今回はこのArtifactについて、配信中に受けた抽象的な質問を中心に、その答えとゲームについてのお話をします。発売してから間もないゲームであるため、筆者も初心者の視点でお話しすることをご了承ください。
 筆者のゲーム遍歴として、Hearthstoneを約2年、Gwentを約1年、その他数々のカードゲームのプレイ経験があります。またArtifactと関連の深いMOBAについては全く経験がありません。以上のことを踏まえて本稿をご覧ください。

Artifactとは

 ゲームについての詳細はValveのストアページに掲載されています。簡単に紹介しますと、Steamの運営元であるValveマジック・ザ・ギャザリングの開発者であるリチャード・ガーフィールド氏を招いて、MOBAの一大タイトルであるDota2をベースに作成したデジタルカードゲームです。特筆する点としては、カードゲームでMOBAのシステムを再現していることであり、他のデジタルカードゲームとは全く異なったゲームシステムであることです。その特異なシステムについては、他の多くのブログやサイトで解説されているため、本稿での解説は割愛します。


pic1.ボードの全容

ゲーム性(競技性)について

 実際には「Artifactどうですか?」という当たり障りのない質問を多く受けました。これについては恐らく娯楽として面白いかと、競技として面白いかの2つのニュアンスが含まれるとして、後者について具体的にお話ししようと思います。前者については個人によると思いますが僕は面白いと思います。

 馴染み深い指標として、RNG(ここでは乱数による影響)の比重の大きさがあります。これについてはほとんどのアクションに運が絡むほど運の要素は大きいです。総合的に見ると僕の感覚ではHearthstoneよりも運の振れ幅は大きく感じました。しかしこれについては一概に運ゲーと言い切れるものではなく、同時にプレイヤーが干渉できる要素も混在しているため、振れ幅は大きいが技術介入度も高いという珍しい作品です。
 具体的な運要素を挙げると、カードドローから始まり、ヒーロー・クリープの初期配置、レーン内のヒーロー・クリープの配置、ショップの出現アイテム、確率発動型能力など、様々な部分で運に左右されるため、Artifactに慣れるまでは振り回されることになると思います。これに対して、技術介入度について具体的なものを挙げると、カードの切り方は元より、ヒーローのレーン配置、増強の設置場所、アイテムの装備先、シークレットショップの活用、配置操作系の効果、次レーンの先手後手など、プレイヤーが選択する要素が非常に多く、運で与えられる状況からどのようにゲームを作っていくかが重要になります。すなわち運も計算に入れてプレイしなければならないため、RNGがよりゲームを難しくしていると感じました。もちろんほとんど技術のみに依存したベータ版Gwentとも違った能力が求められます。

 もちろん他のプレイヤーのスキルが向上すれば、最終的にほぼ運のみで勝敗が分かれるようになるかもしれませんが、その辺りは始まって半月なので今後に期待するしかないでしょう。

課金について

 次によく目にした質問として「どれくらい課金が必要ですか?」というものがありました。まずこれはベータテスト期間に広まった情報で、勝利報酬を得られるモードはプレイするための課金チケットを使用する必要があることに起因し、中には「臓器を売っても追いつかない」という激しい煽り文句があったほど、多額の課金を強いられるかのように語られました。これについてお答えしますと、『人による』です。

 前提として、ゲームは無料で遊ぶものと思うかどうかで話が大きく変わります。まず完全無課金で遊ぶという話であれば、Artifactを購入する時点で2300円かかるため不可能です。次に2300円払ってゲームを手に入れた段階では、フィーチャー(構築積みデッキをレンタルして戦うカジュアルモード)、フレンド戦、カジュアル構築、カジュアルドラフトが遊べます。しかしいずれもカジュアルモードであり、デイリークエストなども存在しないため、永久に資産は増えません。この段階でちゃんと遊べているとは言えないでしょうから、基本的にはカードとチケットを買って上級構築に向かうか、チケットのみでファントムドラフトで遊ぶことになると思います。ドラフトのみで勝ち続けることができれば、初期保有のチケットのみで遊び続けることはできますが、パック報酬はあまり多くないのでいつ構築を始められるかはわかりません。


pic2.フィーチャーモード

 それでは十分遊べるだけのカードを買うにはいくら必要かという話になります。これについては、カードをSteamストアで取引できるシステムから相場が変動するために断定はできませんが、僕は初期投資として15000円使いました。具体的な内訳として、10000円分ほど取り切りドラフトで選別を行い、コモンとアンコモンがほとんど揃ったあたりで残りのレアをストアで購入しました。これだけ使えば大会で活躍したほとんど全てのデッキを組むことができました。また活躍していないカードはストアで安く出品されているため、恐らくこれだけの額を使えば不自由しないと思います。決して、かつて流行ったMMORPGやソシャゲのような毎月数万、数十万単位の課金が必要なわけではありません。
 カードを揃えてからは主に構築で遊んでいますが、3勝以上できれば使用したチケットを回収できるため、チケットを回収しつつ数パックの報酬から出たカードを売って別の安いゲームの資金に充てたりして遊んでいます。勝ち続けていれば課金せずに遊び続けることができるでしょう。結論をまとめておきます。

まとめ
・完全に無課金で遊ぶことはできない
・ゲームを買っただけでは遊べるとは言えない
・勝利報酬は少なく、ラダーやクエストもないため簡単に報酬を得ることはできない
・カード自体はカードゲームとしては安く、勝ち続けることで遊び続けることは可能


pic3.カードの購入(Steamストアでも可)

今後の予想

 「Artifactどうですか?」という質問には、他にも「このゲームは流行りそうか?」といったニュアンスも含まれていたので、これについてもお答えしますと『流行りはしない』。指標としてTwitchの視聴数とSteamの同時接続ユーザー数によるとTwitchでは平日の夜で2000人ほど、Steamでは13000人ほどとなります。すでにこれはHearthstoneのような世界的なesportsタイトルには遥かに及ばず、これまでの公式の宣伝を見るに大失敗なのではないでしょうか。しなしながら、僕はゲーム自体が失敗したとは思わず、期待できるArtifact固有のシステムについてお話ししましょう。

トーナメントモードについて

 Artifactにはラダーモードがありません。そのためモチベーションの維持が難しいのではないかという意見もありました。これもプレイヤーが増えなかった要因の1つと推測できますが、その反面ゲーム内のトーナメントモードが充実しています。このトーナメントモードは試合の管理をゲーム内で全て行うことができるため、イベンターにとっては非常に都合が良いものです。これまでの様々なDCGが抱えていた問題とも言える、イベントモードに対する一つの解答であり、これを活用して競技シーンを盛り上げることができるでしょう。つまり通常プレイよりも大会に主眼を置いた設計であると思われます。配信サイトの視聴数も、平時の人数よりも大会が行われているときを参考にすべきであり、僕としても大会シーンでの楽しみ方を推奨します。独特なゲームシステムに加え、大会への注力で他のDCGとは十分差別化できているように感じます。
 僕も参加したいので、大会の企画をよろしくお願いします。


pic4.トーナメントモード

本稿のまとめ

 ゲーム性については非常に多くの部分にRNGが関わりますが、それ以上にプレイヤーが干渉できる部分が多いです。
 課金については、カードゲームなので多少はお金を払っても良いのではないかと個人的には思います。
 今後のArtifactへの向き合い方として、一人で練習としてプレイしたり、友達とカジュアルに遊んだり、トーナメントを主催したり、トーナメントで遊ぶのが良いのでしょう。

 今回はTwitchでの生放送中に受けた質問を元に記事を作成しました。もし気になることがあれば僕のチャンネルまでぜひお越しください。本稿はガイド記事などではなく、ちょっとした読み物として書いたので細かい解説などは次回以降とさせていただきます。

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